入浴関連事故の主な原因であるヒートショックとのぼせ。
年間推計なんと約19,000人が亡くなっているのをご存知ですか?
これらの事故対策すべく、ノーリツは業界初となる"ガス給湯器のリモコンに人の動きを検知するセンサー"を設置し、
浴室を使用しているときに台所リモコンに入室状況や入浴の状況をお知らせする機能を開発しました。
またスマートフォンアプリ開発により"離れて暮らす家族の給湯器の利用状況"の確認が可能となり、遠隔の見まもりにも活用できるように。この初の見まもり機能を世の中にリリースするまでには企画・開発・IoT推進のメンバーが部署を越えて連携し、力を合わせることが不可欠でした。
お客さまのために、大切な家族のために、自分たちの未来のために...
そんな当時を振り返り、0から生み出した「業界初・見まもり機能開発」のプロジェクトストーリーと部署連携に迫ります。
MEMBERS
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オプション製品開発室1G 1T
小椋 朗広 リーダー
リモコン開発全般を担当。本リモコンでセンサーで人を感知する制御を担当。
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オプション製品開発室2G 1T
杉江 剛史
設計書をもとに、それを製品の動作に落とし込んでいくソフト開発を担当。
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温水事業企画室IoT推進G
川端 裕之
スマートフォンアプリの開発や、スマートスピーカーの音声での遠隔操作の要件定義を担当。
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温水事業企画室 商品2G
浦岡 菜美
リモコンの商品企画やキャンペーンの実施などの販促業務を担当。
STEP1
[見まもり機能付きリモコン開発]
ユーザーの安全を守るには。ノーリツが生み出した「見まもり」という安心
見まもり機能開発の構想・流れとは
小椋: | 2015年ごろに、新しい給湯器を作れないかということで私たち技術者を含めてブレストをしたのが始まりです。当初はさまざまな案が出たのですが、その中で我々ができること、そしてやりたいことを抽出する中で出てきたのが「見まもり」でした。社会問題にも直結しますし「コンセプトとして素敵だよね」ということで構想が始まりました。 |
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企画
浦岡: | 次に温水事業企画室で、企画書をつくりました。内容は「この商品にはこういう機能を盛り込んでください」「このような価格で売ってください」また、「これくらいの数量を販売してください」といったもの。設計や製造、販売において必要な要素を全て洗い出しました。 |
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杉江: | いい機能をどんどんつけようと思ったら、どれだけでもコストが上がってしまうのですが、企画段階でコストと機能をざっくりでも定めてもらうことで、今後の開発が机上の空論にならずにすみます。 |
浦岡: | そうですね。社会のニーズやトレンドを調査した上で、必要な機能やコストを決めます。開発の土台となるものなので、しっかりと作り上げました。 |
企画
開発
小椋: | 次にバトンはオプション製品開発室に移ります。企画書はいわばキーワードでしかないので、具体的に要件定義をするのが我々の役目です。技術的な課題や作りやすさなどを開発側とすり合わせていきました。また、人検知のセンサーを取り扱うことがはじめてだったので、選定・使い方・調整まで全て検討しました。 |
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杉江: | そのセンサーをいかに使いこなすかというのが、設計の仕事になります。コストなどの制約もある中で、性能を担うソフトやハードを実現するために、いろいろと試行錯誤をしながら設計を進めました。無事、完成したときはホッとしましたね。 |
開発
生産
小椋: | 完成したからといって、終わりではありません。品質を担保するために、リモコン全体の検証テストを行います。画面がちゃんと思った通りに遷移するか、ボタンを押したときにちゃんと通信するかなどを一通り全部チェックした上で量産ラインに流しました。もちろん、人検知もちゃんとできるか何度も確認した上で... |
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杉江: | 生産ラインでセンサーをどうやって検査するかを生産部の協力も得て決定しました。 |
小椋: | 検証チェックで問題が発生したら全てダメになってしまうので、もう祈るような気持ちでしたね。無事品質も保つことができて、本当に良かったです。 |
コストと機能を両立せよ。不可能と思われた「はじめて」ばかりのリモコン開発
開発を進める中で、立ちはだかった大きな壁とは
小椋: | 人検知のセンサーには、多くの困難がありました。 ざっくり言うと「人が入ったらついて、人が出たら消える、それ以外はつかない」というセンサーを作りたいんですが、これが結構難しいんです。センサーは熱で反応するんですが、例えば浴室暖房乾燥機で反応してしまうとダメなんですね。ユーザーによって入浴スタイルも様々です。おふろの中で、熱を持っているものは何だろうとか、いろいろと洗い出した上で仕分けするのが大変でした。はじめは無理なんじゃないかと思いましたね。 |
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杉江: | 小椋リーダーとずっと研修センターに入り込んで、実験を繰り返していましたね。ここにいたらセンサーが反応して、端の方に行くと反応しないとか。 |
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小椋: | 同様にリモコンにセンサーをつけるにしても、コストを上げればそれだけ精度を上げられるんですが、そうすると消費者が購入してくれなくなります。浴室の形状やリモコンの取付位置は様々で、なかなか100点を取るのは簡単ではありません。コストと機能を両立した上で、クオリティの面でもどう線引きをするかというのが悩みどころでした。何度も議論しながら進めていきましたね。 |
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杉江: | 部品の性能を最大限引き出すことがソフトやハードの役目ですから。どうしたら安く、かつ性能を担保できるか、試行錯誤の毎日でした。大変なことも多くありましたが部門連携を密にし乗り越えることができました。 |
浦岡: | 機能とコストを両立するという難しい要求を追求し続け、無事実現できたのは皆さんの力があったからこそだと思います。 |
小椋: | 本当に大変でしたね(笑)。でも、やりきった達成感は何事にも代えがたいものでした。社会のためになる製品を生み出せて、本当に良かったです。 |
STEP2
[見まもり機能の無線LAN対応とアプリ開発]
遠隔操作でさらに便利に、ノーリツ初のアプリ開発
小椋: | リモコンができた後、アプリやスマートスピーカーでつなげられたらどうかという話が出てきましたね。 |
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企画
浦岡: | 世の中の流れとしても、家電等を遠隔操作する技術が発展する中で、ノーリツでも給湯器もネットワークにつなげたいという発想が自然と生まれていました。 |
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小椋: | IoTも社会的なトレンドですしね。無線LANの接続は「見まもり」機能ともうまくマッチし、社会に浸透していくのではと社内で盛り上がりました。 |
企画
開発
川端: | 発想が出てきてからは、温水事業企画室IoT推進Gで営業や設計などいろいろな部署から要望を聞き出し、実現できる形に落とし込みました。デザインの要求やアプリの利用規約などの法務関連、テストや受け入れ試験など最終的な部分にも携わりました。 |
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開発を進めるうえで大変だったこととは
川端: | アプリもノーリツでは前例のない試みでした。本当に手探りの状態からのスタートでしたね。リモコンの全ての機能をアプリに実装するのではなく、本当に必要されている機能、例えばお湯張りやメインとなる見まもり機能などを選び抜いた上で要件定義を行いました。 |
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小椋: | リモコンとアプリの両方に表示させるならではの困難もありましたね。それぞれの表示のデザインを統一する必要があります。特に大変だったのは、表示のタイミングをリモコンとアプリで同時にすること。給湯器の近くにあるリモコンと、遠くにあるスマートフォンのアプリにタイムラグが発生しないようにするのが大変でした。 |
川端: | そうですね。困難を乗り越えられたのは、他部署の皆さんとの協力あってこそだと思います。 まさに一丸となってやり遂げたプロジェクトでした。 |
未来へと続く、挑戦者たちの道
このプロジェクトを終えて
小椋: | 社内でも反響がありましたね。「見まもり」というキーワードがうまく刺さったのではないでしょうか。「新しい幸せを、わかすこと」ことをミッションとする、ノーリツらしいアプローチだったと思います。 |
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川端: | 無線LAN対応リモコンは、社長賞もいただきました。ノーリツ初の取り組みが評価されたのだと思います。 |
浦岡: | 売れ行きも絶好調です!他製品よりも値段は少し高いのですが、無線LAN対応リモコン購入でスマートスピーカーがついてくるキャンペーンなども実施し、プロモーションを積極的に行っています。今後もチラシを作るなど販促面でも盛り上げていけたらと思います! |
杉江: | 社内の総力を結集したプロジェクトでしたからね!今後「見まもり」機能が、多くのご家庭に浸透し、安心を提供できればうれしいです! |